雪と氷の世界

 

梅が香る。
春の匂いが懐かしく感じます。

寒さと雪に厳しい冬を堪えながら迎える春ほど、待ち遠しいものはありません。
大雪に見舞われた地方の方々を見ると、四年前、自分も移住先の寒冷地で記録的な大雪に町がすべて閉ざされて、その脅威を肌で味わったことを思いだします。

いつも雪の朝は静寂なのに、その朝はなぜだか異様な暗さがあった。
カーテンを開けると窓の外には雪がなだれ込み、まるきり違う世界だった。
そのうち食べるものもなくなり、自衛隊のヘリコプターの音と、避難所ができたとの町内アナウンスが響きだした。





連日行われている冬季オリンピックは、当たり前だけれど雪国の人達が多い。
その面差しには何か夏の大会とはまた違う、内に秘めた強さを感じます。

被災地出身の羽生選手のショートプログラムでは、自分の舞台より緊張してしまった。
見てるだけで疲れ果てましたが、彼は凡庸な私の想像を遙かに超えていた。

よどみなく流れる水のようなショート。和魂洋才のフリー。

平成の世にこのようなたおやかな美しい男子の舞を見ることができるとは、有難いことです。それも競技で。



個人的には小平奈緒選手の金メダルが、何より嬉しかった。
初めての五輪の時から見ていて、なかなかメダルに届かず、結果がでない時も長野ローカル放送などで目にしていて、こんな控え目で身体も欧米の選手に比べて本当に小柄な日本女性が、諦めず極限まで挑み続ける姿に、秘かに心を寄せていた。

その瞬間、私は跳びはねて涙した。
本当に本当におめでとうございます。

試合後のライバル選手とのふたりの姿は、とびきり美しかったです。


極寒の地で深夜に渡るような時間まで選手たちにジャンプを飛ばせ、先ほど渡部選手たちのクロスカントリーも遅い時間に終わりました。
その本末転倒なやり方に、相変わらず憤りを感じて仕方がない気持ちも湧き上がる中、選手の皆さんの人としても素晴らしい姿に、救われる思いです。


大会が終わる頃には長い冬も終わりに近づき、アスリートも個々の人々も動物たちも植物も、新しい春を迎えることでしょう。

舞台が終わり一ヶ月。
私もしばしの冬籠もりから、歩き出さねばならないと、背中を押されているようです。