土の恵み


このところ、山からのおくりものが沢山届き、食卓が土の匂いでにぎわいます。

大好きなこごみはこしあぶらと共に王道の天ぷら、残りはおひたし。
ふきはうす味で炊いたのち、きゃらぶきにして保存。
豊かな土から採れた新鮮なアスパラなどは、さっと湯を通すだけで鮮やかな緑があふれます。
季節のそのままのものをいただく時、どんな豪華な料理より顔がほころんでしまうのです。


作家の水上勉の著の中に、
土を喰う日々−わが精進十二ヶ月−」
という、軽井沢の生活の中で庭や山で採れたものを自ら料理して、一年を過ごす日々を綴ったものがあり、とても面白いのです。

その中にあったふきのとうのあみ焼きなどは、あまりにも簡単で美味しそうで、「酒客でよろこばぬ人はめったにいない。」など書かれていたので、早春につんですぐに試してみたのですが、いかにも美味しそうに香りだってきたところで食してみたら、中途半端な生焼きとなり、草の香りを思い切り感じるものとなりました。
シンプルなものほど凡ミスは許されぬ。


こんなふうに芽吹きの時期の菜や花に出会うと、どんな時も巡りゆく季節の生命力に心をうたれます。


やましゃくやく


一年にほぼ一日だけしか花がひらくこともなく、人知れずひっそりとただある姿は、美しく、媚びもせず、しっとりとして品格があって、それでいて咲き誇らない理想の花の姿です。
去年、一昨年とこの時期たまたま愛でることができましたが、今年は会えるかな。
わずか一日だけの姿。

なにものにも揺るぎなくただそこにある自然界の有り様に、とうていかなわないと思いながら、今夜も花より団子にいそしむのでした。