皮膚と心
こんな題の太宰の短編がありました。
うちの猫がどうやら皮膚病にかかり、変なふうに毛がなくなっている部分があります。
そして冬の間見なかったタヌキが、身体の半分以上の毛が抜け落ち、皮膚が裸になった状態で現れました。衰弱し、目も見えてるのかわからないくらいの痛々しい姿で、震えていました。
おそらく疥癬という皮膚病かと思われ、そのまま進行していくと死に至ります。野生動物はなすすべもなく、そのまま終わっていくのが常であり、また、犬や猫であっても野良であれば同じことです。近年ここらのタヌキの多くが感染していて、昔はこんなことはなかったそうです。
私は5年の間自然の中で暮らしてきましたが、タヌキ、キツネ、サル、イノシシ、リス、ムササビ…色んな野生動物と普通に出会いました。
灰色のコンクリートの中では思うこともないような光景ですが、いつだってこうしてすべての生き物たちが、どこかで必死に生きて静かに死んでいきます。
その背景には必ず人間という存在が浮き彫りになってしまいます。木を切り、土を埋め、ずっと昔からバランスを保ってきた人間と動物との境界線を侵して、森のエサをなくし、山から降りてきた彼らを車ではねたり駆除したり…。
共存なんて、なま易しいことではないのかもしれません。ですが少なくともそのルールを壊したのは私たち人間の方なのですから、せめて目線だけは向こう側においていたいと常々思います。
そして目の前のいのちに出会ったら、できることは何とかしてあげたいという思いです。
私の理解者であると思われるこの子も、かつて母猫ごと捨てられていました。
今は(多分)幸せです。
この子の治療と共に、タヌキの薬ももらってこようと思います。