時代の終わり


残すところあと一日で、平成が終わります。

この平成という時代は、決していい時代ではなかったように思います。
バブルにはじまり、人が人の心を失い、凶悪犯罪が溢れ、多くの自然災害があり、環境破壊が急速にすすみ、どこを見ても眉間にしわを寄せてしまう、悩ましい時代であったと思います。

その中で、天皇皇后両陛下の国民に向けられた、あたたかな救済の眼差しが、唯一の心の救いであったように思います。

深い感謝の念とともに、この国に生まれたことを改めて誇りに思います。


折しも初めての日本の古典から生まれた新元号に、私自身も万葉集出典には少し驚きましたが、
日本の古典の片隅で、ちんまりと生きてきた私とすれば、新しい時代令和は、日本人が日本の心をとり戻し、心穏やかなよき時代になることを願っています。


平成の終わりとともに、多くの方がこの世を去られました。
今年に入り、梅原猛さんやドナルド・キーンさん、昨年には石牟礼道子さんもお亡くなりになりました。
日本の古典に造詣深く、戦争を乗り越え、90歳を過ぎてもなお各々の道を、命尽きるまで創造なされた、こういった重厚な方々は、これからの世の中には存在しないのかもしれませんが、その魂のかけらだけでも次へと繋いでいくことが、せめてもの未来に残せる大切なものなのではないかと思います。

いつの世も、普遍的な変わらぬものが必ずあることを信じて、新しい時代に希望をもって、いつもと変わらず終わりゆく時代を迎えたいと思います。


久方の天照る月は神代にか出で反るらむ
年は経につつ

               万葉集より