療養生活と復帰

 
長い療養生活が始まり、入院中よりもむしろ精神的にはきついものもありました。

私の場合急な手術だったので、何の心構えもなく、突如歩くこともままならない体での日常生活に、戸惑いと不安がつきまといました。

入院中は皆病人ばかりで、ベットで大人しくしている以外ないのですが、家にいてやりたいこともやれない体で普通の暮らしをしていくことに、焦りやもどかしさで一日が長く感じ、どうやり過ごしていいのかわからずにいました。

退院後、初めて家の周りを一周してみようとチャレンジしてみても、すぐにショートカットしてダウンする始末。
それでも毎日少しずつ歩く練習をして、後ろからおばあちゃんに抜かされるほどよぼよぼ歩きでしたが、初めは横断歩道も怖くて渡れず、それができるとまた距離を伸ばし、初めてのお使いのように本屋に行けたことを喜んだり、普通なら何でもないことが嬉しくも思えました。


少しずつ回復しているように思えば、思うようにいかない身体のしんどさに、一進一退、前向きになれば後ろ向きになりを繰り返して、1ヶ月、3ヶ月、半年、1年…とよくなっていくと聞いていたので、とにかくその時を信じ過ごしました。

動けない時間は、私には必要な時間だったのだと思います。
自分をおろそかにして我慢ばかりしてきたことも、この歳になって気づきはじめてここ数年、追い打ちのように病気でも気づかされて、身にしみる思いでした。

病院の先生方にも我慢強すぎるとかなり驚かれてしまい、私の人生では辛抱強くなくてはならないことが当たり前だったけれど、自分を大事にすることと対峙してはならないこと、そんな当たり前のことに気づかなかったこと、心と体を置き去りにしてきたことを、思い知る時間にもなったと思います。

人や動物の看病や介護は散々してきたのですが、何だか初めて自分を労らざるを得ない時間となったのです。


7月に入ると稽古にも復帰し、初めは怖かった電車に乗って少し遠くにも行けるようになり、日常生活もほとんどできるようになりました。
ありふれた当たり前の景色も、何もかもが新鮮でした。

ほんの一部の人以外に全く知らせずにいたので、療養中会いにきて下さったのにお会いできなかった方や、また活動が止まってしまい、小さな催しも楽しみにして頂いていた方にも、申し訳ありませんでした。

ですが今回のことも舞台が終わってから、そして療養期間に舞台がなかったことは、本当に有難いことで運がよかったと思っています。

私の舞台は自分以外に代役もいなく、代わりがきかないので、だからこそ何があっても立ってきたということもあるのですが、これからは心身共に、自分を大切にすることも心得ていきたいと思います。



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と言いながらも、そのわずかな期間に、子猫二匹と子鳩を保護しました。
なかなか性格は変わらないものです。