京都 貴船神社と衣裳合わせ


4月の連休前に、衣裳合わせのため京都に行ってきました。

毎回京都に着くやいなや、衣裳やさんに伺っていたのですが、今回は前入りし、長年行けずにいた貴船神社にお参りしてきました。



ここは今度の会で舞う「鉄輪」の女が、生きながら鬼となるために、丑の刻に毎夜通った神社となります。

山の奥深く、独特な空気をまとう場所で、物語の重くおどろおどろしい雰囲気とは少し違う、清澄な匂いと山と水の神が包んでいるような、なんともいえぬ力の宿る場所でした。

自然の神の力を強く感じるため、良きも悪しきも思いを叶えてくれる場所となったのではないかと感じました。


私は電車とバスで結構な時間をかけて辿りつきましたが、鉄輪の女は京都の町中から夜毎その足で深い山を登ったわけですから、その思いの強さを物語るに然るべしです。


似通った舞に「葵の上」がありますが、こちらは身分の高い六条御息所、相手は光源氏です。
高貴なお方ゆえ、内に積もった思いが知らぬ間に生霊となってしまい、舞では描かれませんがその後はそのことを恥じて、野宮で源氏との別れを決意し京を去ります。

しかし、この鉄輪の女は市井の人で、思いはむき出しの炎となって、自ら鬼となるために貴船に向うのです。

いずれも恐ろしいだけではなく、哀しい女の心が描かれていて、それこそが美しく、このあたり双方の違いの妙が、元となった能の凄いところだと思います。


それゆえ…
衣裳選びもなかなかの時間がかかってしまい、昨日のかつら合わせもまたすんなりとはいかず、作品をつくることの難しさを改めて感じております。

いいものができるようにと願う夜毎です。