むかしもいまも

師匠も走る、師走です。
あまりにも一年が早すぎて、去年の冬至がついこの間のように感じてしまいます。


世界が混乱の渦の中、先日水木しげるさんが亡くなられました。続けて野坂昭如さんも。
今とは違う時代を生きぬいて、道をつくってこられた方々が、次々と去っていかれます。

私が敬愛していました文楽人形遣い、初代吉田玉男さんも、戦時中はその手に人形でなく、銃を持っていたとのお話を、何かで見たことがあります。

最晩年の忠臣蔵の通し公演を観た時、由良助のあまりのかっこよさに、友人と二人で震えました。
いつも淡々とした変わらぬ表情で、人形に魂をふきこまれ、本当に素晴らしく粋(すい)なお姿でした。
人間国宝になられてからも、老人ホームから地下鉄で劇場に通われているのをテレビで拝見し、楽屋で寡黙に煙草をふかすその人となりに、感慨深いものがありました。

文楽太夫さんの床本(台本)には、師匠が吐いた血や唾の跡があり、その跡かたで弟子がどこで息んだかを知るなどという話も、むかし聞いたことがあります。


生きることも何かを貫くことも、命がけであり、身の削り方が今とは違う時代があったのだと思います。



先月、同時代を生きるミュージシャンの音楽を聴きに行きました。2年ぶりでした。
私の中で時代と共に聴き続けているのは多分彼らだけで、それだけに色んな思いが相まって、少し涙がでそうになりました。

今だからわかるその時があり、その時があるから今がある。
ああ、これでよかったんだな と思えた気がしました。
今までとこれからがとてもいい塩梅にたくさんある、素敵な年頃になったのだと思いました。
そして、音楽はいつだって素晴らしい。


最後に、今年観てよかった映画の一つです。
三上智恵監督の最新作
「戦場ぬ止み」(いくさばぬとぅどぅみ)

5月に都内映画館で観ましたが、今も全国で上映されているかと思います。
私の地元でも今月12日に上映会があるそうです。

むかしもいまも変わることのない沖縄の現実を突きつけられ、思いがこみ上げてしまうのですが、豊饒の海と諦めない人々を思うと、光は自分で見つけていくしかないのだと感じます。

むかしもいまもこれからも。


師走