寒中お見舞い申し上げます。
年も明け、早くも二十日がたちました。
本日は穏やかな一日でしたが、これから大寒らしく一番の寒波が到来するようですので、お気をつけてお過ごし下さい。
今年は少し真面目にこちらも更新したいと思います。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
早いものでお盆も終わりに近づき、雲も月も秋めいた感じになってきました。
少し舞から離れた生活を送ってきましたが、自然や動物や虫や戦争で失われた無数の命のことばかり思いながら夏が過ぎてゆきます。
アフガニスタンで銃弾に倒れた中村哲医師のドキュメンタリー映画「荒野に希望の灯をともす」が先月より公開されています。
行こうと予定すると体調が悪くなったりで未だ足を運べていないのですが、必ず劇場で観たいと思っています。
尊敬する人はと聞かれれば、ふと思い浮かぶのは田中正造や南方熊楠で、共に立場の違う明治の人ですが、同じ時代を生きた方では中村哲医師その人です。
中村先生の生き様は、先生に助けられた現地の人ばかりでなく、この末法の世の有様に嘆く私達にとっても、深い灯火であります。
生前どなたかの「なぜそこまでするのか?」のような問いかけに、中村先生は遠慮がちにただ「一隅を照らす」と答えていたような記憶があります。
その時私に一体何ができるのか…と、胸に迫る思いがありました。
映画「荒野に希望の灯をともす」
http://kouya.ndn-news.co.jp
現在東京のポレポレ東中野をはじめ、順次公開です。
偶然ですが、監督は同郷の足利出身の方で、それだけでも嬉しく思います。
ひと度舞台から降りれば、公演が終わった直後から野良子猫2匹を一時預かりし、その間介護犬を含め10匹以上の犬猫大家族の時を経て、今また時折やってくる野良猫を、さてどうしたもんかと考えているところです。
蛇がやってきて大騒ぎしていた鳥のヒナが、深い排水溝に落ちてしまい、これまた親鳥がどうにもできず鳴いていて、3羽何とか救出したことがありましたが、晩夏にもなるとヒナの声はもうどこにも聞こえず、蝉とヒグラシの声が入り混じり、終戦の日を明日に控えたこの頃は、毎年何とも言えない気持ちになります。
祖父の一人は戦死しましたが、いずれその事実も風化し、この国が悪しき方向に向かう予感が何年も心から消えません。
草木も、鳥も、野生動物も、犬猫も、弱い立場の人々も、万物の生命が無下にされない世の中になることを願います。
たとえそれがほど遠い現実であるとしても、自分がそう思うならば、その気持ちに蓋をせず、毎日を送りたいと思います。
6月8日の舞の会を、無事終えることができました。
「鉄輪」の方は新しい試みでしたが、直前まで様々なご意見をとりいれ、先生方、スタッフの皆さまのご尽力で、思い描いた形になったのではないかと思います。
(まだ映像など俯瞰で見ていないので、あくまで想像上ではありますが…)
幕開け直前の写真を、能楽師の津村禮次郎先生が撮っていてくださいました。
この場面は元の舞にはありませんで、能においては貴船にいる出で立ちで、ここから様子が変わっていくような感じであります。
特別な演出にしたため、髪の結い方も床山(とこやま)さんにアイデアをだして頂き、この演出の鉄輪らしいものをつくって頂きました。
能に寄りつつも、舞の形は一切崩さずにしたかったので、皆さまのお力なしでは叶わなかったものが形になり、有り難く特別な時間でありました。
この日、この時間を共にしてくださったお客さまにも、一緒に空気をつくって頂き、心から感謝申し上げます。
はじめて地唄舞を見てくださった方が大変多くいらしたにも関わらず、とても色々なことが皆さまに伝わっていることを知り、日本のこの伝統芸能を伝えていくことを、これからも続けていかなければと思わされました。
こちらは楽屋にて「こすの戸」の衣裳。
津村先生と。
鉄輪とは対照的に、静かでしっとりとした地唄舞らしい曲です。
支えてくださった皆さま、お忙しい中お越しくださった皆さま、本当にありがとうございました。
少し落ちついたら、ゆっくりふり返ってみたいと思います。
先月取材がありました月刊誌が、今度の会の記事をとりあげて下さいました。
5日後には幕が上がります。
今の季節にぴったりな「こすの戸」は、紗袷(しゃあわせ)の衣裳で舞います。
紗袷とは、ほんのわずかな今の時期にしか着られない着物で、薄い紗が重ねになっていて、下の柄がほんのり透けて見えるもので、季節を楽しむ日本人ならではの着物です。
津村禮次郎先生のおはなしでは、能の「鉄輪」の面も登場し、大変貴重なひとときをお楽しみいただけます。
「鉄輪」は今回特別な形で上演いたしますが、私の頭の中だけでイメージしていたものを漠然とお伝えしただけで、先日一度きりのお稽古で、すうっと思い描いた通りの形になり、出演の先生方の凄さを深く尊敬いたしました。
演出家もなければ細かいお願いも何もなく、他分野が融合しても形になるところが、日本ならではの息と間で培われてきた芸能のすごさだと改めて感じました。
一期一会の皆さまとの共演です。
スタッフさんも含めていい舞台にするため頑張っておりますので、少しでもご興味がありましたら、ぜひ会場にお越しいただけましたら幸いです。
当日券もございます。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
4月の連休前に、衣裳合わせのため京都に行ってきました。
毎回京都に着くやいなや、衣裳やさんに伺っていたのですが、今回は前入りし、長年行けずにいた貴船神社にお参りしてきました。
ここは今度の会で舞う「鉄輪」の女が、生きながら鬼となるために、丑の刻に毎夜通った神社となります。
山の奥深く、独特な空気をまとう場所で、物語の重くおどろおどろしい雰囲気とは少し違う、清澄な匂いと山と水の神が包んでいるような、なんともいえぬ力の宿る場所でした。
自然の神の力を強く感じるため、良きも悪しきも思いを叶えてくれる場所となったのではないかと感じました。
私は電車とバスで結構な時間をかけて辿りつきましたが、鉄輪の女は京都の町中から夜毎その足で深い山を登ったわけですから、その思いの強さを物語るに然るべしです。
似通った舞に「葵の上」がありますが、こちらは身分の高い六条御息所、相手は光源氏です。
高貴なお方ゆえ、内に積もった思いが知らぬ間に生霊となってしまい、舞では描かれませんがその後はそのことを恥じて、野宮で源氏との別れを決意し京を去ります。
しかし、この鉄輪の女は市井の人で、思いはむき出しの炎となって、自ら鬼となるために貴船に向うのです。
いずれも恐ろしいだけではなく、哀しい女の心が描かれていて、それこそが美しく、このあたり双方の違いの妙が、元となった能の凄いところだと思います。
それゆえ…
衣裳選びもなかなかの時間がかかってしまい、昨日のかつら合わせもまたすんなりとはいかず、作品をつくることの難しさを改めて感じております。
いいものができるようにと願う夜毎です。
20周年記念公演
第6回俵菜緒舞の会のお知らせです
令和4年6月8日(水)
紀尾井小ホール
午後6時30分開演(5時45分開場)
入場料8000円/学生3500円(全席自由)
地唄「こすの戸」
舞 俵菜緒 唄·三絃 富田清邦
おはなし
津村禮次郎
地唄「鉄輪」
舞 俵菜緒 狂言 野村太一郎
唄·三絃 富田清邦 琴 菊森美穂
笛 松田弘之
季節にちなんだ曲に、しっとりとしたこすの戸と、能楽師である津村禮次郎先生の楽しく貴重なおはなし。
そして、能から移された鉄輪を、若手狂言師の野村太一郎さんによる間狂言をはじめとする、能の様式をとりいれた形での初の上演となります。
演奏には、富田清邦先生の唄と三絃に、菊森美穂さんの琴。能管の松田弘之先生のお笛です。
素晴らしい諸先生方と共に、独立から20年となる節目の公演を迎えます。
コロナ禍が長びく中ではございますが、どうぞ足をお運び頂きますよう、よろしくお願い申し上げます。
チケット申込み
カンフェティチケットセンター
tel:0120-240-540(平日10時〜18時)
https://www.confetti-web.com/mainokai
4月1日発売