牡蠣工場

閏年の2月も最後の日です。
気忙しくして時間が過ぎてしまいましたが、
先日、20日から渋谷で上映されている想田和弘監督の最新作「牡蠣工場」を観てきました。

想田監督とも久しぶりに再会することができ、嬉しいことでした。


岡山の小さな港町牛窓が舞台ですが、小さな世界から果てしなく大きな問題や、これからのことやこれまでのことやあれやこれや…
と限りなく色々なことが浮かばれ、言語野の狭い私ではなんとも表現できないものですが、想田さんのいう「文明の病」という一言の重さが淡々と切りとられていました。

日々感じていることではありますが、この映画を観たあと、ふと震災後に石巻から離れた田代島に行った時のことを思い出しました。

震災から一年後に行ったその島は、人口より多い猫と数人のお年寄りにしか出会わず、
かつては子供が沢山いたことを思わせる、廃校になった学校のあとのそばを、放射線量を測りにきていた調査員とすれ違い、それこそ「映画みたいだな…」と思ったのでした。

この先この島はどうなるのだろう…と思いながらフェリーから遠く離れていく島をあとにしました。

瓦礫の山のほか、何もなくなってしまった海沿いと、ひと気のない石巻を歩いた時にも、すでにシャッター街となった街を、追い討ちをかけるように津波がおそったんだろうな…と思い、いたたまれませんでした。


想田監督と私は偶然にも同郷で、私たちの故郷も今やあれだけ賑やかだった商店が軒並み閉まり、街の映画館も消え、人は歩かず大型店にばかりものが流れていきます。
これが見せかけの「豊かさ」の代償なのでしょうか。


日頃からできるだけ「人」の手によって作られたものを手に入れるように心がけてはいます。
物もお店も宿でも、できるだけ大量生産ではない、心あるものと日々ふれていたいと思います。
小さな店の主人がその場で焼いてくれるお団子は、今や何よりのもの。
また当たり前のことが当たり前のように流れる世の中がきたらいいと願います。


それにしてもいつも思いますが、スクリーンに映しだされる普通の人びとの顔は、心に残る印象的な表情が多い。なぜなのだろう。


すっかり時の人となった想田監督の「牡蠣工場」は、渋谷のイメージフォーラムにて上映中。全国でも順次公開です。
前売券を購入すると、牡蠣のポストカード(?)がついてきます!