幕があがる

あと3日で幕があがります。

数ヶ月、追われるばかりの日々でしたが、ようやくここまできました。

今回の「雪」は、ちょうど10年前の同じ日、同じ場所で舞わせていただき、期せずしてこのような運びとなりました。

地唄の言わずとしれた名曲で、恋に破れた女が俗世を捨てて仏道に帰依しながらも、雪の降る夜、積もった雪が落ちる音に、あの人が来たのではないかと思わず外に出ると、ただしんしんと降る雪が積もりばかり…

断ち切れぬ揺れる想いを唄っただけの曲ですが、谷崎潤一郎は随筆「雪」で切々と語っています。

細雪」でも描かれ、いかにこの曲の世界が哀しく美しいかを物語っています。

もう一曲は能から移された本行物の「珠取海女」で、こちらは壮大な海の物語です。

藤原不比等との間に子を儲けた海女が、その子を世継ぎにする約束で、龍宮に奪われた宝珠を取り返しに海へ潜ります。

悪魚と戦い珠を奪い返すも守護神に追われ、乳の下をかき切り珠を隠し入れ、浮かび上がると息絶えます。

13年の時ののち、世継ぎとなった息子房前が回向のため海を訪れると、海女の霊が現れ、我こそが母だと明かし、海の底へ消えてゆきます…

どちらも名もなき女の悲しみと愛の曲ですが、それぞれの趣の違いを感じていただけたらと思います。

 

 

こちらも期せずして私のもとに届いた、昭和の大名人、神崎ひで先生がおもとめになった扇です。

50年近く前のもので、今回つかわせていただきます。

現在、舞の世界のゆく末は大変厳しいものですが、脈々と受け継がれてきた先人の思いを胸に、精一杯つとめさせていただきますので、是非足をお運びいただけましたら幸いです。

当日券もございます。          お待ちしております。